自民党本部をガサ入れしなかった東京地検の弱腰

 法律は最低限のモラルであり、その基盤にあるのは“常識”。

 東京地検特捜部は、自民党本部の「迂回献金」という“パンドラの箱”を開けなかった。自民党旧橋本派の政治団体「平成研究会」の「1億円献金隠し事件」で、同派の会計責任者1人が逮捕起訴され、あとは「日歯連」の臼田、内田の2人を東京地検特捜部は起訴したところで捜査を終結した。

 これには、自民党本部事務局長の元宿仁という男が、かなり重要な部分でアドバイスしていたのに、数回の事情聴取だけだった。元宿は「1億円事件」で、当時の常務理事内田裕丈に相談された時、「平成研」に直接わたった1億円について、「見せ金」を1億円用意して「国民政治協会」の口座に入れるよう持ちかけていたという。

 内田は「元宿事務局長から、見せ金の1億円を持って来てくれれば、協会に金を入れて領収書を発行して最終的に金を返す」と言われたことを一部新聞で報道されている。2001年11月20日、永田町の自民党本部で「日歯連」の内田が事務局長の元宿に3000万円を預け、衆議院議員佐藤勉ら4議員に渡すように依頼したという。

 この3000万円は「日歯連」名義で「国民政治協会」の銀行口座に振り込み、数日間「協会」の口座に置かれた後、他の献金と一緒に自民党側に送金されたという。この時自民党側へ振り込む場合には端数を上乗せして金額を違えて資金源をぼかし形跡を消し去る。これが問題の「迂回献金」だ。

 少なくとも、この3000万円については、佐藤勉は“厚生労働政務官”の時期で厚生行政には大きな影響力があったのに"職務権限"がないということで特捜部は不問にしたのだろうが、ことはわれわれの医療費にかかわるだけに納得がいかない。

 金を「日歯連」から受け取った議員が「日歯連」側に有利な発言をするに決まっているし、献金する側は“見返り”を期待する。このような大金が飛び交う自民党の「国民政治協会」は伏魔殿。ここに捜査のメスが入らない限り同じようなことが今後も繰り返されてゆく。確かに「迂回献金」は政治資金規正法違反には問えない。しかしマネーロンダリングの実行者が無償のままというのでは"常識的にみておかしい。

 したがって「迂回献金」などは、やましいからするのであって、やましい「迂回献金」は法規制によって透明にするべきだろう。2002年に逮捕された衆議院議員の鈴木宗男が牛耳っていたとされる北方支援事業で、「三井物産」が受注したジーゼル発電施設は、総額で約40億円だった。この時、「三井物産」は支援事業では納税義務のない"消費税"まで上乗せして政府から払わせていた。

 これに気づいた「仕置人」が「三井物産」に、不当に受けている2億円の“消費税”分を外務省北方支援室に返還するよう進言したが「三井物産」は、「うちはその分は納税してますので、国税が返還してきたら返します」といっていた。そのころ「三井物産」が「国民政治協会」に2億円を献金していたので、「仕置人」は「三井物産は、消費税を納税しているので支援室に返還すべき2億円を返さないでいる。

 ついては協会が受けている2億円を物産に返す気はないか」と元宿に電話をし、元宿本人と会う約束をした。ところが当日になって元宿は「急用ができたので」と断ってきた。その後何度電話しても元宿は電話に出なくなった。元宿の巧妙な「迂回献金」の手法を「元宿システム」というそうで、まさに元宿はマネーロンダリングの指南役。元宿は群馬県の貧しい家庭に育ち、夜間大学に通いながら自民党でアルバイト。

 '68年に職員となり、広報担当だったが79年には世田谷に地下一階、地上2階の豪邸を建て、趣味も多彩。自分の画集を出版したり、沖縄へスキューバーダイビングと優雅に暮らしている。

 事務局長になっても経理部長を兼務、そうして自民党本部では並みの議員より力を持つようになる。したがって議員からゴルフや料亭への接待がひきもきらないという。

 そうした“実力者”だから特捜部の腰が引けたわけではないだろうが巧妙な「迂回献金」の“元宿システム”にメスを入れなかったのは検察の国民に対する裏切り行為である。
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