海外への“資産逃避”を許さない国税

 去る3月4日の『朝日』1面トップに、
<武富士の前会長の長男海外移住装い>
<贈与1600億円無申告>
<最高の1300億円追徴>の見出しで、「武富士」前会長の長男武井俊樹が、会長夫妻から99年に財産の贈与を受けながら贈与税の申告をしなかったとして、東京国税局から1600億円を超える申告漏れを指摘されていたことを報じていた。

 税務当局や捜査当局の目の届かない海外への投資や資本移動には、脱税やマネーロンダリングといった思惑が多く、前国税庁長官の渡辺裕泰は「国際的租税回避スキームの調査に重点を置く」と宣言していた。



「武富士」武井俊樹の“脱税”を報じた新聞

 武井俊樹は、前会長の武井保雄夫妻が、97年12月、オランダ法人「YSTインベストメンツ」を設立、証券会社を通じ、夫妻所有の武富士株1569万株を約1000億で前記の「YST社」に売却した。さらに夫妻は、99年12月に「YST社」株の90パーセントを俊樹に贈与した。98年末に「武富士」が東証一部に上場したため、「YST社」株の価値も上がり贈与した財産は1600億円余りにのぼったのだという。

 俊樹は「武富士」の取締役を兼ねたまま97年に香港に移住したことになっていたが、俊樹には現地法人代表としての“勤務実態”がほとんど無かったことから、主な財産は国内財産にあたる「武富士」株などだったことから国税局は「香港への入国は、海外居住の形をとって税負担を免れるため」と判断したようだ。

 かつては認められていた海外への資産移動が、国税当局の“解釈”によって課税処分されることがここのところ少なくない。例をあげればあの“悪名高い”旧「商工ファンド」(現「SFCG」・大島健伸社長)の件がある。社長の大島健伸は、ケイマン島などの“タックスヘブン”(国税回避地)を使い、「ケン・エンタープライズ」が社債を発行し、大島ら親族が所有する海外の特別目的会社がこれを購入するという形で、資産を移動させていた。 ところが、これに130億円の“申告漏れ”を国税によって指摘された。

 大島らは「これまで認められてきて、法律による制限もないのに、いきなり課税するとはおかしい」として行政訴訟を起こしている。「武富士」の武井や、「SFCG」の大島クラスの資産家になると、税制に詳しい弁護士や税理士を雇い、防御は固い。しかし国税当局には、こうしたカベを突破できるとの確信が伺える。

 こうした“脱税”の手法を認めれば、海外への“資産逃避”が一般化し、国民の不公平感が募り、国家の秩序は乱れるという危機意識があるため、国税は一層厳しく対処する方針だという。


「武富士」創業者 武井保雄前会長

悪名高い旧「商工ファンド」
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