「平山郁夫」ってそんなに偉いのか

 今年7月ごろ『読売』<編集手帳>に、東京芸術大学学長平山郁夫について、「その道を極めた人はさすがに違う」と国土交通省の幹部が感激していることが書いてあった。

 国交省の幹部が何に感激したかというと、きわめて単純。今、羽田沖の東京湾に、4本目の滑走路を建設する計画で、国交省は滑走路の向きを変えた。ところが離陸できなかった飛行機が再上昇する方向に「アクアライン」の海底トンネル用の換気塔がそびえ、塔を低くしないと安全を保てない。こんなところの設計に係わったのが平山郁夫だった。

 「芸術家と言えば、一般的に気難しいのが通り相場だけにどう伝えるか頭を痛めた」という。ところが平山郁夫は設計変更を切り出したところ「そういう事情なら、やむを得ないでしょう」と、即座に要求を受け入れた、といって国交省の幹部は感激したのだという。
 総工費9000億円を投じる巨大公共事業に平山郁夫という画家が、なぜ係わったのか不可解だが、一方ではまたまた“政治力”を使ってこの巨大プロジェクトに食い込んでいたのだろう、といった声も無いわけではない。

「文化勲章」「文化功労者」「総理・文部大臣賞」「芸術院大賞3回」そして「東京芸術大学学長」「日中友好協会会長」と肩書きは確かに立派だ。

 そして『美術年鑑』によれば、1号550万円と絵画界でもダントツの1位でご立派というほかはない。しかしこの平山には、どうも“うさん臭さ”がついてまわる。いや策士といった方が分かりやすい。

 平成8年に、平山は“国家公務員法違反”で“告発”されている。“告発”したのは、同じ美術界で『月刊美術情報』を発行している金田弘治という人物で、金田は、昭和52年6月から、銀座にあるM画廊の取締役に就任し、平成8年3月に辞任しているが、これは「営利を目的とする私企業からの隔離を規定する国家公務員法103項及び人事院規則1414(営利企業への就職)に違反し、国家公務員法109号、13号に該当する」というもの。

 平山は「東京芸大」という国家公務員でありながら、かつて竹下登(故人)や中曽根康弘らと親交を結び、“政府の仕事”と称してシルクロードへ行くこと数十回。その旅先で描いた作品の展覧会や、売却、画集の印税などで平成7年度の高額所得者に浮上、同年の納税額は6億4000万円を超え全国で17位だった。

 国家公務員法では原則として兼業を禁じており、同法104条では「届出て総理大臣の許可を要す」ことになっている。この年には、大分県の野上小達という人物にも平山は“告発”されている。その“告発”された内容とは、三井グループが敦煌洞窟のレプリカを、九州の同グループのレジャー施設に展示したいということで、平山が間に入って交渉していたが、三井側と平山の言い分が違っているなど、どうも平山氏は信用できないので、野上が代わりに仲介して下さいと頼まれた。

 一方、旧文部省の予算で敦煌調査を行った平山は、当時公職にありながら、3回の調査結果を三井グループに流していたという。これが衆院予算委員会で樽崎弥之助が問題にし、「敦煌石窟学術調査の件」として“参考人招致”を要求したところ「巷間言われていることは文部省、法務省、警察当局も何のいわれもないことと承知している」とし「血圧が高い」、「自宅療養中」と逃げた。

 この昭和62年の「学術調査隊」は平山が団長として敦煌へ派遣されたが、その一行の中には当初から「三井」が進める“九州アジアランド構想”に関係していた堺屋太一や水民護郎(三井物産副社長)らが参加し、4,500万円もの調査費が与えられた。そして翌63年には、平山郁夫と「三井物産」会長の八尋俊郎を常任理事とする「文化財保護振興財団」という財団法人が設立された。この財団が目指した当初の事業は、中国敦煌の「莫高窟」を視察していた。その翌年の63年には「九州アジアランド企画」という会社が設立された。このように、国の金で調査をし、民間企業のための財団を設立、「三井」ぐるみの思惑による財団には、国からの補助金も出ている。

 こうして民間企業の“計画”に国民の税金を注ぎ込んだ結果は頓挫ということになり、税金をドブに捨てたようなもの。平成元年12月から「東京芸大」学長に就任し、同7年12月に退任した。しかし同13年12月から前代未聞の“復職”を成している。

 衆議院内には平山が描いた竹下登の肖像画が掛けられているし、参議院議長の部屋にも平山の特大の絵がある。

 こうして平山は中曽根、竹下ら時の権力者と結びつき、絵を売りまくり、高額所得者として名を連らねる。これはもう“芸術家”というより“商売人”いわゆる“俗物”平山郁夫に国交省幹部は「その道を極めた人はさすがに違う」と感激したというわけだ。



平山郁夫が学長を勤める東京芸術大学の正門
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