―シリーズ西武― 西武と堤義明の“悪業”を暴く <5>

新横浜駅予定地買収のワル知恵

 中嶋忠三郎の『西武王国』は、前記したような事情で書店に並ぶことなく1億円でボツにされ、義明、清二と中嶋の子息の3冊しかこの世に存在しないといわれている。

 筆者は、1975年から"西武批判"を続け、『財界展望』や『噂の真相』(廃刊)などなどに20本ほどレポートを書いている。そして、1983年3月には『西武商法悪の構図』をエール出版から出している。

 従って「西武ウォッチャー」とか、「堤兄弟の天敵」などと言われてきた。ところで、中嶋忠三郎の『西武王国』は、その立場上手加減しているし、好意的な部分が多い。

 例えば<昨今の地上げ屋のように、住人を脅かしたり透かしたりして追い出し、買収するというような卑劣な手段は取らなかった。>とか、
<・・・・堤は、政治活動と事業を峻別していたから、買収に政治を利用したり、政治力で他人の地所を買収するという考え方はしなかった。>と『西武王国』では述べているが、これは真っ赤なウソで、康次郎ほど善良な農民や地主を騙し、フルに政治家であることの立場を利用して事業に結びつけた人物はいない。
だから中嶋忠三郎は、横浜の新幹線用地買収問題を書いた中で<堤がどこから情報を得たかは、はなはだ微妙な問題ではあったが、国鉄筋からの情報には間違いないところであった。>と記している。

『西武王国』では、この新横浜駅用地買収問題は、たった2頁でかけぬけている。康次郎が、「競馬のトレーニングセンターにする」と言って「日本開発」の中路新吾なる人物に買収させた新幹線 新横浜駅 予定地は、約8000坪。競馬のトレーニングセンターなら、確かに細長い土地を買収することは当然と思う。1959年(昭和34年)は、旧国鉄が東海道新幹線の路線を決定した年だった。この土地を康次郎は1坪4000円から最高で8000円で買収し、1961年に1坪2万9500円で旧国鉄に買わせた。

 これを知った元地主たちは「騙された」と怒り、この問題を処理したのが中嶋忠三郎だった。康次郎は、この土地買収に当たった中路真吾なる人物を海外に逃亡させた。旧国鉄は'59年には9億円、'60年に105億円の資金を繰り越していた。

 これだけの繰り越金があったのに路線を決定直後に買収すれば、康次郎の土地ころがしの策謀にはめられなくて済んだし、余分な損害を国民に与えなくて済んだのである。

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