危なくないのか!奥日光「おおるり山荘」

効率の良さだけで宿泊客をさばく営利主義


何の変哲もない画一的な部屋が並び、部屋の調度品は最低の安物ばかり。温泉ホテルとしての安らぎなど微塵も感じられない

 “1泊2食で7000円足らず”という価格の安さに魅かれて仲間たちと25名のツアーを組んで奥日光の「おおるり山荘」と称するホテルへ向かった。
 “バスでの送迎”をキャッチフレーズにしているだけに早朝7時には集合場所にマイクロバスが到着した。
「この度のツアーの幹事のKです」と幹事がバスの運転手に挨拶すると「昨日電話したのに出ないじゃないか」といきなり噛みついてきた。Kが幹事役に決まった時、連絡先をKの携帯電話に変更していたのに、申し込んだ時点での電話番号に確認の電話を入れたらしい。
「あなたの方のコミュニケーションが悪かったんじゃないの」
 こんな調子で朝からムカツク。
 そこで主催者であるYがチップを渡すと、態度が豹変した。

 天気は快晴。「途中どこか観光・・・例えば華厳の滝とか東照宮とか寄ってもらえるのかな」と問うと「いろは坂が渋滞するのでそんなとこ寄れませんね」
 幹事のKはまた腹を立てる。しかし我慢する。“安いんだから仕様がないか”と感情を抑える。
 しかし、さしたる渋滞もなく、10時ごろには昼食をとる予定の「表参道」というレストランに着いた。メニューはほとんど麺類だった。“こんなに早くレストランに着いてどうするんだろう”と思っていると「まだ昼食には早いので輪王寺を見学します」と誰も希望していないのにバスは走り出したが、すぐに渋滞。すると「歩いてくれ」と運転手。
 みんなは上り坂の道を15分ほども歩かされる。輪王寺は確かに歴史的にも由緒のある名刹かも知れないが、リニューアルのためのテントですっぽりと覆われていて外観を見ることができない。境内の僧侶は、仏像の前で「どんな宗派でもこの鬼門除けは効果があります」なんていって鬼門除けのお札を1枚3000円で売り始めた。 また別な僧侶が案内をはじめ、仏像の裏側を通りながら今度は“お守札”のPRをする。出口へ向かうには“お守札”の販売をしている狭い通路を通らなければならない。何人かは買い求めたらしいが、“サギ商法だ”と幹事はつぶやく。
 そしてレストラン「表参道」での昼食だが、25人なのに24人分の席しかないため、1人は“仲間外れ”状態で後ろ向きで食べることになった。

 食事が終わってしばらくすると大型のバスが来て「バスを乗り換えてください」と言われる。大型バスには他の団体客が先に乗り込んだから、われわれのグループはその後に続き、少し不安になったKが「運転手さん」と3回呼んだのに知らんぷり。 近寄って「こちらは25人いるんですが」というと「何?ちゃんと乗れるに決まってるじゃないか」とすごい剣幕で睨む。そこで幹事が「25人乗れますかと聞いただけなのに何だいその態度は」と声荒げると、運転手はレストランに入っていった。幹事が追いかけて「バスは何時に出るんですか」と聞くと「すぐ出発するよ」。 「すぐという時間はない。何時何分に出発できるのか」Kは幹事と言う立場から車内で待っているみんなに知らせなければならない。

 しばらくして運転手は食事を終えて出てきたが他のバスの運転手3人ほどと立ち話を始めた。

 ちなみにこの運転手は50歳ぐらいの男で「こまどり交通」の車輌ナンバーは35番。名前は池田幸一郎という。このバス会社である「こまどり交通」もレストラン「表参道」も「おおるり山荘」と同じ経営者で、社長は斉藤正洋という。 「おおるり山荘」の系列ホテルは、本社が鬼怒川にあり、塩原、那須、草津など関東に16ヶ所もあり、すべて同一システムで、2名の場合1人6285円で、3名の場合は1人5775円となっているが、バスの運転手の接客態度から見て社長は観光事業にかかわる経営理念など持ち合わせていないものと思われる。

前代未聞でサイテーの接客マナー

 「おおるり山荘」に着いてフロントで幹事のKが説明を受ける。「お客様のご案内」(カット参照)という紙切れを渡された幹事は、グループのみんなに説明をする。誰かがフロントへ行ってバスタオルを借りてきた。「50円ですって。手拭いを紛失したら100円ですって」。その手拭いたるやお粗末な代物だった。


 ホテル到着時に幹事だけに渡された紙片

 風呂に入ると、卵の腐ったような臭い。そして脱衣所の貼り紙には(硫化水素泉)とあるのでギョッとしたが、これについては後段で記すとして、5時30分からの食事は、これまたひどい。
 16畳の部屋にブタのように詰めこまれた25人は、後は壁で通ることもできないし、トイレに行くにもお膳を跨いで行かなければならないほど。(写真 参照) 間仕切りは薄く、隣室のカラオケの歌声がガンガン聞こえる。


 膝がぶつかり合うし、お膳とお膳の間隔は1センチもなく、後は壁で身動きも取れない

 水割りウイスキーの氷を頼んだら、1リットル程度の器1杯が500円。別にカラオケルームがあったが、10時で閉店。土産店も10時でシャッターを降ろしてしまう。
 部屋へ帰ると、廊下のほうで大声が聞こえた。聴いてみると、5人部屋に布団が4組しか敷かれていなかったことからフロントに電話をかけたところ「自分たちで対応しろ」と言われ、仲間たちが「支配人を呼べ」と怒ったらしい。

 朝食は「8:00〜8:30まで」とあった。(カット参照)
 通常の観光地のホテルなら7:00〜9:00とかで2時間ほどの有余がとってあるが、この「おおるり山荘」はたったの30分で、ゆっくりお茶を飲む時間もない。そして10分ほど遅れて食事を始めた人もいたが、8:30には、いっせいに片付けはじめる。

 グループごとのバスの発車時間がロビーに貼り出されている。「11時発車」とあったので「みんな11時まで部屋で待機してください」と幹事が言い、部屋に戻ってのん気にくつろいでいたら「掃除しますよ」と3〜4人の係りの男たちがドアを叩く。
「11時にバスが出るのだから、それまで居たっていいじゃないか」と言ってみたものの、各部屋(6室)の仲間たちは、そそくさと荷物を片付けてロビーへ。しかしロビーはバスを待つ人でごった返しだ。しかも11時と定まっていたバスが発車したのは11時40分だった。


AM 9:30に部屋を出され、バスが来るまで2時間も待たされている宿泊者たち

 JR日光駅までタクシーで1万円もかかることから、アウシュビッツのガス室に送り込まれたユダヤ人のように、バスが何十分遅れようと、コワーイ運転手の意のままに「おおるり山荘」のマニュアルに従うしかない。
 そういえば、2人の仲間が仕事の関係で早朝4時に発つのでタクシーを手配してくれるよう頼んだが断られたし、朝食分としておにぎりを握ってもらいたいと頼んだが、これも「そういうことはしていませんから」とつっけんどんに断られた。 またタバコも置いてないため「どうしてこれだけの施設(380人)にタバコを置かないのか」ときくと、フロントの男性は奥の方へ行ってしまった。

危険な“硫化水素泉”を安全に管理できるのか

 「おおるり山荘」に到着して温泉につかろうと風呂の脱衣場に入って驚いた。その洗面台にドライヤーやクシが無いのは宿泊料金の安さからいって期待してはいなかったが、洗面台を支えている右端には、どこかで拾ってきたような木製の“棒”を当ててあった。
 洗面台を使用していた客の膝でも当たったら洗面台は確実に落ちるズサンな処置だ。


風呂場の脱衣場にはドライヤーさえも置いてないし、洗面台の支柱は、棒で無造作に支えてある

 この風呂の入口には<お願い>として<当ホテルの温泉は硫黄泉(硫化水素泉)です。ご入浴の際は貴金属を外してください。変色する恐れが御座います。>と貼り紙があった。
 幹事のKは、温泉に関する造詣が深いわけではないが、“硫化水素泉”という文字を見て背すじが寒くなった。


(硫化水素泉)とあるが、効能や硫化水素の“危険性”についての注意はまったく記されていない

 “硫化水素”は卵の腐ったときのような臭いを持ち、空気より重く、無色の毒性の強い気体である。
 平成11年9月6日、福岡県筑紫野市に西日本最大の産廃処分場の水質検査槽内で4人の死者を出した事故が発生した。
 幹事であるKが当時これを取材したのだが、この現場の検査槽の中から「“硫化水素”が検出された」と筑紫野警察署が発表した。
 こうした経験から“硫化水素”の危険性を承知していた幹事は、この温泉の卵の腐ったような臭いの にごり湯には10分ほど身体を沈めただけだった。

<御所湯>とあるからには、知らない人は何だろうと覗き込むだろう
<温泉ガスが発生するので顔を近づけないでください>とホテルの近くに書かれているが、ここにも“危険性”の告知がない

 この「おおるり山荘」の近くには、<御所湯>と記した“立札”があり、その横には家畜小屋ほどの屋根がある。近づいてみると、<温泉ガスが発生するので顔を近づけないでください>と注意書きもある。(写真 参照) 1メートルもないような高さのところでは小さな子供は顔を近づけて覗いてみたくもなるだろう。この札にある<温泉ガス>とは<硫化水素>のことであるのに<危険>という文字が見当たらない。「転ばぬ先の杖」が必要なのではないだろうか。 とくに「おおるり山荘」のような、客を客とも思わぬ対応をする意識の低いホテルではたして<硫化水素泉>の安全性に重きを置いているのだろうか。したがって幹事は栃木県西健康福祉生活センターに“検査”の要請をしたところ、抜き打ち検査をした、という。 「硫化水素の濃度は基準値を下回っていましたし、換気扇も洗い場と浴槽に2ヵ所設置されてありました。ただ、お客様がもう一度来たいと思わせるようなサービスを心がけるよう注告しておきました」と担当者から報告があった。

 通常のサービスでこの安さなら“安い”というものだが、安かろう、悪かろうでは“安い”ということにはならない。



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