医者と焼肉屋が結託した“レバ刺し食中毒隠ぺい事件”

 “加熱用レバー”を“レバ刺し”として出されて食べてしまった「北川文化音楽事務所」所属の歌手 雛形しんや。しかし、焼肉屋「味道苑」(草加市・爪生隆司社長)と結託した「正務(まさつか)医院」(埼玉県草加市・正務秀彦院長)は、雛形しんやの症状を「食事との因果関係を証明するものではありませんでした」(診断書より)。そして院長は「味道苑」に電話で患者の個人情報である診断結果を知らせていた。


医者でありながら、患者の“病状”と“食事”は関係ないと、患者の個人情報を 焼肉屋「味道苑」に漏えいした「正務医院」


「正務医院」のロビーに貼られたバイト医師名の一覧表


「裁判になったらカルテを出す」の横暴

 「北川文化音楽事務所」(以下「北川事務所」)所属の歌手である雛形しんやが、今年5月9日、「味道苑」(草加市)に呼ばれ、ファンとともに食事した。その時、ファンに薦められて食べたのが“牛レバ刺し”だった。
 その2日後くらいから体調がおかしく関節などに違和感を覚える。そして3日目には体中の関節に苦痛、深夜には39度7分の高熱が出て、めまい、吐き気、下痢、油汗に苦しむ。その後も多量の血便、下痢、高熱がつづき、それから大量の下血が毎日数回という日が2週間以上も続いた。 その間の5月13日(日)には草加市の独協病院で時間外診療したが、胃カメラ検査は3日後、大腸内視鏡検査は7日後の予約しかとれなかった。
 しかし翌日も下血が続き、血便は2回。翌々日の5月16日には下血が3回もあり、獨協病院の検査を待てなくて、近所の開業医である「正務(まさつか)医院」で急拠胃カメラ検査、点滴と薬をもらって帰宅するも、17日にはまた下血が3回もあり「正務医院」にかけ込み、点滴、大腸内視鏡検査の後入院する。

 この「正務医院」には1週間入院していたが、患者である雛形しんやが不信感を持ち「都内の大きな病院を紹介して下さい」と頼むと「紹介はできません」と正務院長は拒否したという。
「入院中には、看護士が来て、保健所や警察への話の進み具合を不安そうに探りに来たり、ぼくが病院内で下血をしても調べようともしないのです。大腸の検査の時も、事前に下剤で腸内をすべて洗い流しておいて“検査結果は異常なし”なんです。 特に恥ずかしかったのは、大腸内視鏡検査の時、検査の医師、院長、助手の看護士の他に5〜6人もの人が、ぼくの肛門からカメラを通し、テレビに大写しにされるのを見学されたことです。 そんなことは僕は認めていません。そして退院するときにカルテのコピーを下さいというと“裁判になったら出します”と言ってコピーをくれないのです」

 そして「一番許せないのは、正務院長が、焼肉屋の味道苑の店長に、患者の病状や食事との因果関係はない、と電話を入れていることです。そのくせぼくに説明があったのは退院の2日前です」と怒りをぶちまけた。

<感染性腸炎の疑い>と記されている
獨協医科大学病院の「診断書」

<急性感染性腸炎>とあり<2〜3週間自宅療養を要する>と記されている
国立国際医療センターの「診断書」

問題の正務医院の「診断書」


「東大卒」を吹聴する“疑惑だらけ”の正務院長

「北川事務所」にしてみれば、11年前から作詞家の北川文化に師事した雛形しんやだけに、35歳といえば、まだまだ活躍してもらわねばならない。しかしこの“食中毒”によって仕事のキャンセル、謝罪やCDジャケット撮影の中止、レコード会社、関係スタッフ、マスコミに対する信用損失や精神的ダメージなどで大きな被害を受けている。したがって「正務医院」の対応の悪さには怒り心頭といったところ。

 “仕置人”が「正務医院」の院長である正務秀彦を取材で訪ねた。
「先生は、患者からカルテを要求されても裁判にならないと出せないと言ったそうですが」
 すると正務院長は「そんなことは言ってません」と否定した。同行した雛形しんやは「先生は言ったじゃないですか」と押問答。
 そこで“仕置人”が「それなら今カルテを出してあげたらどうか」と言うと「カルテは出せませんよ。カルテのコピーなら出しますよ」ときた。「今コピーしてください」と言うと「忙しいから、3日後に郵送する」、「かいざんする可能性があるから今出しなさいよ」と“仕置人”も声を荒げる。
「雛形さんは、下血の検査もしないで、しかも焼肉屋の方に食事との因果関係はないと電話したと言ってますが・・・」と仕置人が質すと「電話なんかしてない」と憮然と答えた。これが去る10月24日だった。

 しかし、11月1日に再度訪ね、焼肉屋「味道苑」の店長が正務先生から電話をかけてきたと言っている録音テープを聞かせようとすると「聞かなくていい」と遮って「味道苑に電話したことは事実だが、私としては保健所に連絡しなきゃならない。だから、味道苑に電話で食べたものを確認しただけです」と前回とは一変した丁寧な対応。 だが、正務院長が<非特異的大腸炎>と診断、<食事との因果関係を証明するものはありませんでした>(診断書)という以上、O157やサルモネラ菌などの細菌も検出できなかったということだから保健所に報告する義務はない。だとすれば正務院長は患者が食した“レバ刺し”との“因果関係”まで否定して「味道苑」に伝えているのは、刑法134条の「秘密の漏示」に抵触することになり犯罪行為に等しい。


5月9日の夜、ファンに誘われて焼肉屋で“レバ刺し”を“ファンの顔を立てるためにも”と食べ、食中毒で「正務医院」に入院した歌手の雛形しんや

このように雛形しんやは注目されているが、今だに首が痛かったり身体全体のだるさが抜けない


「味道苑」店長と“仕置人”との一問一答

「保健所に対して加熱用のレバーをレバ刺しで出しましたと言ったんでしょ」

店長「俺はっきり言ってません、出しましたなんて。聞いてください、最初から話しますと、保健所の人から、お宅でユッケかレバ刺食べたお客さんから一報いただきました、と。保健所はレバ刺は今は生食用と言うのはほとんど出ていない、と、大体加熱用だ、と。だから本当は加熱用を出されちゃ困る、と、だけど私はわかりません、と、認めてはいないですよ私は。だから表示されてないんですよ、肉屋さんから入るときに、加熱用というラベルが貼ってないんですよ」

「厚生省は何を基準にして区別しろと?」

店長「それは私にはわかりませんよ。はっきり言いますと、芝浦の大きいところありますよね、そこはしっかりしています。ちゃんとラベル貼ってあります。全部加熱用です、生食は一切ない」

「お宅はそこからとっているんじゃないの?」

店長「そこからはとってない。私どもの業者は東北の方から直送で来るレバーです」

「なんていう業者?」

店長「それは言えません」


加熱用“レバ刺”を示すレシート。“仕置人”は食べないで持ち帰って検査している

「それから正務先生からはどういう電話が入ったんですかね」

店長「はい。だから最初言ったように、うちの社長のこと、顔は知ってるんですよ。今井さん、国会議員の今井さん」

「今井宏さん?」

店長「はい。うちの社長お呼ばれして、親交あるんですよ。そこで正務先生も今井先生とは古い友人だと言うことまで社長は知っているんですよ。それで先生が社長が来たのをみかけたんですって。社長とは話してないんですよ、その時は。区長さんとちょこちょこっと挨拶したみたいで。そこで正務先生が、あら味道苑の社長じゃないか、どうしたんだ、ということで、まあ、病院内で話したんじゃないですか。 で、その後、どうしたんだ、という電話いただいて、いやこういうわけで、こういう状態、こういうことで入院なさっている人がいるんです、と。それで、ああそうなんだ、とそれで終わったんですよ。その後、ひとつ言いたいのは、さっきも言った通り、1人では食中毒という判断は絶対できないと。食中毒と言われてましたから私どもは。私どもも食中毒は1人では、大勢じゃないと食中毒とは言わないとそれはわかってましたから。 ただ、うちで食べたんで、もし何かあったんであれば、100パーセントじゃなくても1パーセントでもその可能性があれば、やっぱ少しは謝罪とかお見舞いっていうのは当然あると思うんですよ。うん、そりゃうちらが100パーセント悪いってことじゃなくてもですよ。うちに食べに来てくださった事実なんですから。食べたのも事実。そりゃ何を食べてどうなったのか、それは私はわからない。ただそこでそういうのは絶対ありえない。食中毒はありえません。 で、店長ひとつ言っておきます、と。その入院なされた方は前から腸の病気を持っていた、と。で、それが原因だから、食中毒というレバ刺、ユッケ、それはありえませんよ、と院長先生から直接電話いただきました。で、それで社長に伝えました。それで私は解決したと思いましたよ。で、その後お電話いただいて、私はそれを言ったまでですよ。正務先生からこういう電話をいただいて、こうなんですよ、だからうちとは一切関係ありませんよ、と」


“食中毒”の元凶とみられる“レバ刺”を客に出した「味道苑」


加熱用のレバーを“レバ刺”として客に出しながら「新鮮な肝臓の刺身」とし、仕入先を開示しない「味道苑」

「あなた電話で言ってるもんね」

店長「はい。言いましたよ。正務先生がうちとは関係ないですよといってくれた以上、私ども関係ありませんよ、と言えるのは当然だと思うんですよ。それだけですよ」

「じゃあ、その生まれつき持っている腸の病気って何なんですかね」

店長「それは院長に聞かないとわかんないですよ。じゃあ私いいですよ、正務先生のとこ一緒に行ったって。院長が直接、そういうような、難しい名前でした、全部覚えてない。なんとかなんとか」

「何ていわれた?腸の病気、昔から持ってるっていう病気」

雛形「いや、持ってないですよ。わかりませんよ、持ってないそんな病気。僕も知らない」

「雛形さんは医者から話は聞いてないんだ」

雛形「僕が医者から病状について説明を受けたのは退院2日前ですよ。何で先に店長さんが知っているのか」

店長「そりゃ私関係ありませんよ。そりゃ正務先生とあなたの関係でしょう?私はそれより知りませんよ」

「でも腸に病気があるって言われたんでしょう」

店長「だから、私はそう聞いて、それ以降は本人が聞いてないのはそりゃ正務院長先生に文句を言うのが筋じゃないですか。私に言われたって仕方がないです」

雛形「でも院長はこう言ってるんですよ。病気とかそういうことは言ってませんって」

店長「そういうこと言ってませんって?ははは、じゃあ電話しましょうか?私かまわないよ、確実に聞いて院長先生直々に電話いただいてるんだから」

 この店長へのインタビューでもはっきり正務院長と「味道苑」社長とは面識があったと言っている。しかし正務院長は「知らない」とトボケていた。また、店長は、入院された方は前から腸の病気を持っていて、それが原因だから食中毒ではない、と電話で言ってきたことと、「じゃあ(正務院長へ)電話しましょうか?私かまわないよ、確実に聞いて院長先生直々に電話いただいてるんだから」と胸を張って自信満々。「東大卒業」の医者とは、この程度の“良心”しか持ち合わせていないようだ。

「食べたいものは食べて食中毒になっても仕方ない」という国の論理

 平成13年5月、旧厚生省生活衛生局から、各自治体に“通知”された<生食用食肉等の安全性確保について>には、「生食用食肉の加工等基準目標」、「食肉処理場における加工」、「飲食店営業の営業許可を受けている施設における調理」などに分けて、それぞれの管理方法が記されている。 そのうちの「飲食店営業・・・」の部分が、「味道苑」に当たるものだが、例えば「まな板及び包丁等の器具は、専用のものを用いること」とか「器具は清潔で衛生的な洗浄消毒が容易な不浸透性の材質であること」とか、「手指又は器具が汚染されたと考えられる場合には、その都度洗浄消毒を行うこと」などなど30項目ほどもあるが、こんなことを全て守り通している営業店など皆無といっても過言ではなく、いわゆる実現性のない“役人仕事”の典型だろう。 したがっていっそ<レバ刺しを食うべからず>と法規制してしまえばいい。今回の症状のような“レバ刺し”を食べることによる危険性を思えば、食べないことの安心の方が価値ある判断ではないのか。

 “仕置人”の取材によれば、全国的に牛レバーが原因である食中毒(下痢、腹痛、発熱など)が厚生労働省に報告されているが、牛の腸管内に存在する“腸管出血性大腸菌O157”のほか“カンピロバクター菌”が牛の肝臓からも検出されたという。 この“カンピロバクター菌”による食中毒は発病までに時間がかかるというから、雛形しんやの場合の2日後あたりからの高熱、下痢、背骨に苦痛を覚えたということから“レバ刺し”に疑惑があり、正務院長の「診断書」のように「関係ない」と断定できる状況ではない。
 ちなみに5月22日の「正務医院」より8日後の「国立国際医療センター」の「診断書」には<急性感染性腸炎>とあり<2〜3週間自宅療養を要する>と記されているし、「正務医院」より9日後の「獨協大学病院」の「診断書」でも<感染性腸炎の疑い>と記されている。

 “カンピロバクター菌”は、健康な牛に常に存在している菌の一つであり、食用に処理した後も肝臓内部で長く生き残るといわれている。また、現在の食肉処理技術では、肝臓内部に入り込んだ“カンピロバクター菌”を完全に除去するのは困難だと考えられている。したがってレバーは加熱して食べることとし、そうすれば雛形しんやのような“被害者”が出ないで済む。

 それにしても「私は東大を出てるんだ」と言い、「裁判になったらカルテを出す」と言い、“レバ刺し”を食べさせた店に電話をかけて「食事との因果関係はない」と患者の個人情報を伝えた医師のお粗末なモラルは救いようがない。
 また加熱用レバーを“レバ刺し”として提供する店。こうした社会的責任感の無い者たちの犠牲にされた善良な市民は、ただ馬鹿を見るだけなのか。


患者1名では“食中毒”とはいわないと「店長」は言うが、“1人食中毒”の例もこんなにある


<加熱調理用食肉・レバーなどを生食用として提供しないでください>と、栃木県が注意を呼びかけている



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