-シリーズ- 認知症の資産家老人に群がったハイエナたち<3>
“重文美術品”や“建築物”を処分していた「ムッターフーズ」の女性役員

 平成12年10月20日、文部科学省の文化財保護審議会の答申があり、その答申の中に「紙本墨画淡彩四季山水図」という六曲の屏風があった。『京都新聞』(平成12年10月21日)の<重要指定>の記事によると「六曲一双の屏風で水墨山水図のなかでは最も古いものの一つ。四季表現が明快で、安定した図様構成を持ち、狩野派の登場で絵画が定型化される前の様相を伝える」というもの。所蔵者は京都市東山区・Y・T(記事には本名)で、このY・Tの娘であるY・A(以下「A子」)が「ムッターフーズ」の取締役に名を連ねていた。


「ムッターフーズ」のA子が、母親の名義で文化省に届け出ていた室町時代の六曲一双の屏風。国の重要文化財に指定された。(クリックで拡大)

 A子は昭和30年生まれだから現在52歳。A子の父親と中谷正敏が知り合いだったことから、正敏の女房の会社「文殊」が所有していた祇園の土地と建物をA子が借り、昭和56年4月に「閻魔」という会社を設立、ブティックを経営することになった。
 A子が「文殊」から借りた建物は、“たばこ王”といわれた村井吉兵衛が興した旧「村井銀行」の祇園支店だった建物で、大正13年に設立され、現在国の“有形文化財”に指定されている。
 この由緒ある建物が競売にかけられ、平成15年1月15日にA子が8,820万円で落札し、同年3月4日に登記しているが、その年の9月9日には「(株)日興実業」という会社に転売している。ここでA子はかなりの利益を得ていると思われる。


旧「村井銀行祇園支店」。ここにA子のブティックがあった。A子は、正敏から借りていて、競売にかかるや8,820万円で落札し、直後に売却してしまった


A子が、正敏から借りていた建物を落札した「入札書」

 しかし、それまで「契約書」がなかったものの、平成13年1月10日に正敏と「閻魔」の間で1ヵ月20万円で「賃貸契約書」が交わされている。平成13年1月といえば、正敏を認知症と認定した京都府立医科大学名誉教授が、その抑止剤である“アリセプト”の投与を始めた後で、正敏に正常な意思がはたらいたか疑問が残る。


   正敏が認知症の薬を飲むようになった後にA子は契約を結んだ

 そこで冒頭の屏風の所有者であるA子の母親に電話を掛けて事情を聞くと「弁護士の井岡先生にまかせてありますのでそちらに聞いて下さい」と言う。
「もともと中谷正敏さんの屏風だったものがどうしてあなたが所有することになったのか自分の口から言って下さい」と“仕置人”が質問するが「井岡先生に」のくり返し。
 そこでやむなくA子の親せき筋に当たるという弁護士井岡三郎に電話で聞いたところ、「あなたに説明する義務はない」とだけ言って電話を切られてしまった。“仕置人”はまた電話をかけ直し「話している最中に一方的に切るとは無礼だろう」というと、また切ってしまった。
 この弁護士井岡三郎は、正敏と、中島健二という正敏から土地を買ったとする医者の代理人になったこともある。
 ところが、例の屏風は、平成14年にはすでに広島にある「ウッド・ワン」という会社の所有する“美術館”に名義が替わっていた。


A子が現在経営しているブティック。取材で訪ねると、男が出てきてドアを閉め“仕置人”はしばらくドアに挟まれたまま。



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