-シリーズ石原慎太郎- 都政に石原知事は不要だ<7>

<芥川賞選評>で見えた石原慎太郎の文学的センスの枯渇

<○卵子というのは卵細胞って名前で呼ぶのがほんとうで、ならばなぜ子、という字がつくのか、っていうのは、精子、という言葉にあわせて子、をつけてるだけなのです。>
 こんな書き出しで初まる川上未映子の「乳と卵」が第138回芥川賞(下半期)を受賞した。その選考会は築地の“新喜楽”という料亭で開かれるのが通例で、約2時間ていど討議を行う。
 現在の芥川賞選考会は池澤夏樹、小川洋子、川上弘美、黒井千次、高樹のぶ子、宮本輝、村上龍、山田詠美、それに石原慎太郎の9名。
 この受賞作『乳と卵』に完全に拒絶反応を示したのは石原ただ一人だった。

<川上未映子さんの『乳と卵』は仕掛けとたくらみに満ちた良い小説だった。>(池澤夏樹)。<勝手気ままに振舞っているように見せかけながら、慎重に言葉を編み込んでゆく才能は見事だった。>(小川洋子)。<ぎりぎりのところで制御された見事な文体で書かれている。>(村上龍)。<このスタイルで今後どのような作品が生み出されるか、注目して待ちたい。>(黒井千次)。<受賞となった川上未映子さんの作家としての引き出しの多さが『乳と卵』のよってはっきりした。3人の登場人物には血肉が通っていて、それぞれの吐息が聞こえる。>(宮本輝)。<『乳と卵』。饒舌に語りながら無駄口は叩いていない。容れ物としての女性の体の中に調合された感情を描いて、滑稽にして哀切。受賞作にと、即決した。>(山田詠美)。

 結果としては6名が『乳と卵』を押したことになり、川上弘美と高樹のぶ子の2名は消極的だった。
 石原は<受賞と決まってしまった川上未映子の『乳と卵』を私はまったく認めなかった。一人勝手な調子に乗ってのお喋りは、私には不快でただ聞き苦しい。この作品を評価しなかったことで私が将来慙愧することは恐らくあり得まい。>とけんもほろろの扱い。
 つまり、これほどに石原は“文学的センス”が枯渇してしまっているのであって、一刻も早く芥川賞選考委員から身を引くべきだろう。

 面白いのは山田詠美が“選評”の中で<文学は政治を題材にできるが、政治は文学を包容し得ない。選考と政治は無縁。>と、まるで石原への面当てともとれる選評。つまり「石原さんはもう文学が理解できない生臭い政治屋で俗物なのよ」と言われているようなもの。

 それにしても、かつての芥川賞選考委員には小林秀雄、川端康成、佐藤春夫、中村光夫、伊藤整、石川達三、石川淳、丹羽文雄、舟橋聖一、三島由紀夫、永井龍男、室生犀星ら日本文学の重鎮が顔を揃え、重厚な作品が選ばれていたが、今は文学不毛の時代といえる。


生臭い石原都知事に文学が分るはずがない。「新銀行東京」だって責任を取れ。


『卵と卵』で第138回「芥川賞」を受賞した川上未映子


「文芸春秋」(08年3月号)クリックで拡大


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