初代環境庁長官・大石武一(2)“四日市ぜんそく”での失敗談


  四日市ぜんそく訴訟 第一回口頭弁論

 大石にとっては初入閣のポストだが、“公害”による問題が多く、医師としての見識を持つ大臣としては、うってつけで、“四日市ぜんそく”問題でも、大臣が患者を見舞うという前代未聞の“珍事”で話題になった。

「わたしは、長官室に新聞記者を集めて、よく話をした。彼らから参考になる話もいっぱい聞いたな。それで、四日市の件もよく聞いていたから、自分の目で確かめたくてね、それで調査に行った。そこでたまたま37、8歳の若い主婦が死亡した。それは、政府が、大気汚染公害と認めていないから死んだも同然で、せっかく調査に来ているのだから見舞いに行こうとした。すると、県と市役所の役人が来て行かないでくれと言うんだ。“何故だ”と聞いたら、今まで県知事も市長も見舞いに行ったことがないから、大臣に先に顔を出されたら立場が無くなる、と言うんだ。わたしは“バカ言うな。大臣が行くんだからちょうどいい機会だ。知事も市長もついて来い”と言ってさっさと見舞いに行った。そうしたら喜ばれてね。悪口でも言われるかと覚悟して行ったんだが、ご主人にえらく感謝されてね」。

 当時、このことが新聞に出て、翌日記者会見で「失言事件」というのがあったので、そのことについて聞いてみた。

 「そう、次の日だった。記者会見の席で、患者らの団体と会ってね、わたし余計なこと言ったんだなあ。自分が医者なものだから、つい親切心で口がすべってしまった。医者としてはいい言葉なんだ。しかし政治家としてはどうかと思う。つまりね、“ぜんそくというのは精神的な要因でも起こり得る病気だ。自分はぜんそくになるかも知れない、などと心配していると、本当になりかねない、わたしも10年ぜんそくで苦しんだから、よくわかる。だから、あまり心配しないで、むしろ大したことはない位に考えた方がいい”と話したんだ。すると、坊さんが1人すくっと立ってね、“大臣、それは違うんじゃ、間違っとる”ッて大声を上げた。“四日市ぜんそくはそんな精神的なもんじゃない。ほんとうに、そう(大気汚染による公害病)なんだ”と怒られちゃってね。翌日の新聞にデカデカと書かれたよ。“患者の神経を逆なでする長官”云々とね」

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